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手足のつっぱり

手足のつっぱりを専門用語で、痙縮(けいしゅく)と呼びます。

痙縮の原因と症状

麻痺の症状が長期化すると、痙縮に至る恐れがあります。
「痙縮」とは、脳卒中や脊髄の損傷などによって麻痺した筋肉が異常に緊張して硬くなり、曲がったまま伸びなくなったりする、もしくは伸びきったまま曲がらなくなるという症状です。
手足の筋肉は、本来、縮んで曲げる筋肉(屈筋)と緩んで伸ばす筋肉(伸筋)がバランスを保ちながら機能しています。ところが、錘体路の神経線維が損傷を受けて脳からの指令が伝わらなくなると、バランスが崩れます。縮む筋肉ばかりが興奮して緊張し、曲がったまま固まってしまうのです。さらに、ある時点からは筋緊張による抵抗が弱まることがあります。これを「折りたたみナイフ現象」と呼ぶのですが、屈筋と伸筋のいずれか一方の興奮がとくに強く見られるのが特徴です。そうなると、関節が曲がるだけでなく、伸び切ったまま動かなくなることもあります。多くの場合は、下肢の膝関節や足指の関節が伸びたままとなります。
患者さまは、腕を動かしにくいため、着替えることが大変になります。また、手の指が思ったとおりに動かず、物をうまくつかめない、さらには手指が曲がってしまっているため、手のひらを開くことができず、清潔を保てません。膝がつっぱって痛い。足の爪先が伸びないため、歩きにくいといった生活の支障をきたしてしまいます。
脳卒中の後、このような不便が気になり始めたら、痙縮の可能性を考えるほうがいいでしょう。脳卒中の後遺症では患者さんの約4割に発症すると言われ、多くの場合は数か月から半年くらいで始まります。

進行した場合の典型的な症状は、次のとおりです。

  • 手首が内側に曲がったまま動かない
  • 肘が曲がったまま動かない
  • 手の指が曲がったまま伸びない
  • 手の指がにぎりこぶし状になって開かない
  • 肩の関節が固まって動かない
  • ちょっと刺激を受けただけで脚がつっぱってしまう
  • 脚の筋肉がつっぱったようになって動かない
  • 足首が伸びたままで、足裏の側に曲がってしまう
  • かかとが地面や床面につかない
  • 足指が内側に曲がったまま伸びない

四肢が完全に麻痺してまったく動けないことと比べれば軽症だと思われるかもしれませんが、けっして楽ではありません。
たとえば、着替えができない、入浴してもうまく身体を洗えないため清潔を保てない、歩きにくい、つねに腕が屈曲して胸部を圧迫するため締め付けられているようで心理的に苦しい、手足を無理に動かそうとするとひじょうに痛い、食事がしにくい、よく眠れない、思うようにリハビリテーションが行えないなど、日常生活にもさまざまな支障が生じるのです。
痙縮が進行して慢性化すると、さらに硬直化した「拘縮」に至ります。拘縮になると、筋肉が緊張して凝り固まった状態が固定化し、もう戻ることはありません。したがって、痙縮の徴候が見られたら、少しでも早く治療を始める必要があります。

痙縮の治療

痙縮の治療としては、リハビリテーションに加えて、薬物投与、電気刺激治療、温熱療法、外科的治療などが行われます。
ただし、いずれの場合も痙縮を完治させるものではありません。症状が改善することにより、患者さんが少しでも動きやすくなり、日常生活の質を改善することが治療の目的です。

痙縮のリハビリテーション

麻痺の段階と同様、痙縮が始まってからも理学療法によるリハビリテーションを行います。目標は、筋肉の硬直をときほぐして関節の可動域を拡げることです。麻痺から進行した痙縮であれば、麻痺の状態に戻すことを目的とすることもあります。痙縮と比べれば、麻痺の状態のほうが生活しやすいためです。理学療法のセラピストが補助しながら、ストレッチや関節可動域訓練などを中心に行いますが、腕や脚の筋肉の硬直が強い場合には、次に述べる薬物治療を併用することで効果を発揮します。

内服薬投与

リハビリテーションと並行して、ダントロレンナトリウム、チザニジン、バクロフェン、ジアゼパム、トルベリゾンなど、硬直した筋肉をやわらかくする作用がある内服薬を投与します。副作用を避けるために少量から始めるので、薬の種類や投与量が決まるまでに一定の時間がかかります。また、痙縮の程度が強い場合、あまり効果が望めません。

神経ブロック治療

痙縮の症状が出ている部位の神経にフェノール、エチルアルコールなどの薬液を注射します。収縮しようとする神経の働きをブロックし、周辺の筋肉をやわらかくする治療です。

ボツリヌス治療

ボツリヌス菌の毒素ボツリヌストキシンを精製した薬液(商品名ボトックス、ゼオマイン)を用いる「ボツリヌス療法」もあります。ボツリヌストキシンには筋肉の動きを弱める作用があり、比較的、安全なため、美容整形ではシワ取りなどに使われていますが、痙縮の症状緩和にも効果があるのです。効果は注射後、3~4日で出始め、約3~4か月間持続します。ボトックス注射の効果がある間に集中的なリハビリテーションを行えば、さらに効果的です。ボトックス治療は、保険診療でカバーされておりますが、身障者手帳を申請しておいた方が、支払額は軽減されます。

バクロフェン髄注療法(ITB)

痙縮の症状が強く、薬の内服や、ボトックスだけでは十分な効果が得られないケースでは、バクロフェンの薬液を、直接、脊髄周辺の作用部位に入れるバクロフェン髄注療法(ITB)が行われることがあります。
手術によって患者さんのおなかの皮膚の下に薬剤注入ポンプを埋め込み、定期的にそのポンプに注射器で体外より薬液を補充。ポンプ内の薬液は、カテーテルという細い管を通って少しずつ脊髄の周囲(髄腔)に送られます。患者さん個々の症状に応じて薬液の量を調節することが可能なため、強い痙縮にも対応できます。
手術は、全身麻酔で行い、体内にカテーテルやポンプを埋め込んだ手術は、およそ2時間程度です。直後は安静が必要ですが、数日後からは入浴や食事など、ほとんど従来と変わりない日常生活を送ることができます。痙縮そのものを完全に治療することはできませんが、かなり緩和し、日常生活の質を上げることができます。
ただし、まれに頭痛、脱力感、血圧低下といった副作用の他に、ポンプシステムの故障や感染症などの恐れもあるため、身体の状態につねに気を配る必要があります。
保険が適用され、効果は永続的ですが、現段階ではあまり普及していません。今後普及すると思います。

ポンプの大きさは厚さ約19・6㎜、直径約74㎜、重量は空の状態で約165g。薬液を入れるタンクの容量は約20mlです。カテーテルはやわらかいチューブです。

【治療の流れ】

目標設定

治療を始める前に、担当医師とよく話し合って、症状をどこまで改善したいかの目標設定を行います。

スクリーニング

薬液がその患者さんに効果があるかどうかを調べるため、腰から少量の薬液を注入する判定テスト(スクリーニング)を行います。

ポンプとカテーテルの埋め込み手術

効果が確認できたらポンプとカテーテルの埋め込み手術を行います。おなか側にポンプを埋め込むために5㎝程度の切開を、また背中側にカテーテル挿入のための2-3㎝の創部が残ります。手術は1回ですみますが、1週間程度の入院が必要です。

薬液の補充とポンプの交換

患者さんは退院後も定期的な通院が必要です。
ポンプ内の薬液は、2~3か月に1回程度の間隔で、注射によって補充します。ポンプ自体は内蔵電池で作動しますが、5~7年で交換しなければなりません。
担当医師は、プログラマと呼ばれる小型コンピュータを用いて、体外より患者さんの体内に埋め込まれたポンプの作動状況や電池の残量を確認。患者さんの状態に合わせて、薬液が出る量を調整したり、変更したりすることができます。