三叉神経痛・顔面痙攣

当院では三叉神経痛と顔面痙攣に対する手術治療の豊富な実績と経験があります。ここではこの2つの病気について、詳しく説明します。

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三叉神経痛について

三叉神経痛は顔面の片側に、発作的に数秒から数分続く激痛が反復して起こります。洗顔、ひげ剃り、歯磨き、咀嚼や冷たい風にあたるなどの刺激によって誘発されるのが特徴です。三叉神経はその名前の通り3本に分かれて顔面に分布しています。1枝(おでこ、こめかみ)よりも2枝(頬・上あご)3枝(下あご)に多く起こります。そのため、初めは虫歯かと思って歯科を受診することが多く、歯科治療を行っても痛みが続く…というエピソードをお持ちの方も多いです。

三叉神経痛のうち、腫瘍や血管障害、神経脱髄・変性疾患によって生じるものを症候性三叉神経痛、それらの原因となる病気がないものを特発性三叉神経痛といいます。そのため、診断のために画像検査(MRI)が必要となります。原因となる病気がある場合はその治療を優先します。特発性では治療法として薬物治療、神経ブロック、ガンマナイフ、神経節凝固術、開頭手術があります。

まずは体に負担の少ない薬物治療を開始します。特にカルバマゼピン(テグレトール)という薬剤の効果は高いです。薬物治療の効果が乏しい場合、また薬が体に合わない場合(皮疹・肝機能障害・ふらつき・眠気など)に外科治療を検討します。

当科で行う外科治療は微小血管減圧術という手術です。外科治療の中では最も治療効果が高い治療です。手術は全身麻酔で行います。痛む側の耳の後ろに約6cm程度の皮膚切開を行います。2~3cm程度の小さな開頭を行い、手術用顕微鏡を用いて脳内操作を行います。三叉神経を圧迫している血管を神経から剥離して、再び神経を圧迫しないように固定します。当院では基本的には transposition 法という、神経から血管を離して固定する手術法を用いております。日本脳神経減圧術学会で推奨している方法です。予定通りであれば一週間程度の入院期間となります。

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当院の治療実績

当院では2007年から三叉神経痛に対する手術治療を開始しました。2007年4月から2023年12月までの間に、383例の手術治療を行っています。そのうち、初回手術は337例であり、術後に痛みが完全に消失した、または薬を使わなくても良い程度に痛みが改善した例は93%でした。
(日本脳神経減圧術学会が中心となり行った、複数施設による共同研究[Neurosurgery. 2021; 89 (4): 557-564]では、三叉神経痛の改善率は手術後3年間で83.9%、合併症率は5.2%と報告されています。)

再手術例(他院、または当院で過去に手術を受け、再発または改善不十分な例への手術を行った例)では85%の方が、痛みが完全に消失、または薬を使わなくても良い程度に改善しています。

画像診断で三叉神経と血管の接触が明らかでないのに、三叉神経痛を発症している方には、神経内剥離術(internal neurolysis, nerve combing)という術式を行うことも可能です。三叉神経の繊維の方向に沿って、数カ所の分け目をつくる手術です。他院で微小血管減圧術の適応ではない、と断られたケースでも、この手術の適応となることがあります。当院ではこの手術の経験があり、実施可能です。

顔面痙攣について

自分の意思と関係なく、顔の片側がピクピクと動く病気です。最初のうちは目の周りがピクピクすることから始まりますが、徐々に目の周りから口元に広がります。さらに進行すると首筋や耳、額にまで広がることがあります。ひどくなると一日中ぴくぴくして、目を開けられないようになることもあります。眩しさや緊張などで症状が悪化する人もいます。特殊な耳鳴りを感じる人もいます。

顔面を動かす神経が、脳の深部で血管により圧迫されることにより起こります。MRI撮影により原因となる血管を見つけることができます。

治療としては外科治療とボツリヌストキシン注射があります。
外科治療では、開頭手術を行います。全身麻酔下で手術を行います。耳の後ろに約6cm程度の皮膚切開を行います。2~3cm程度の小さな開頭を行い、手術用顕微鏡を用いて脳内操作を行います。当院では基本的には transposition 法という、神経から血管を離して固定する手術法を用いております。日本脳神経減圧術学会で推奨している方法です。予定通りであれば一週間程度の入院期間となります。

ボツリヌストキシン注射による治療は外来で行います。痙攣している筋肉に注射を行い、筋肉を麻痺させることでけいれんを止めます。注射後2日程度で効果がみられます。ただし注射の効果は3ヶ月程度でなくなってしまうので、けいれんが続く場合は治療を続ける必要があります。また長期的な仕様により顔面の筋肉の麻痺が生じることがあります。

当院の治療実績

当院では2007年から顔面痙攣に対する手術治療を開始しました。三叉神経痛と比べると症例数が少ないですが、2007年4月から2023年12月までの間に、111例の手術治療を行っています。術後に痙攣が完全に消失した、または、たまに痙攣する程度まで改善した、という方は93%でした。
(日本脳神経減圧術学会が中心となり行った、複数施設による共同研究[Neurosurgery. 2021; 88 (4): 846-854]では、手術による顔面痙攣の改善率は手術後3年間で94.4%、合併症率は3%と報告されています。)

三叉神経痛の場合は、手術直後から効果が出る方が多いですが、顔面痙攣の場合、効果が出るまでに時間がかかることが多いです。当院の経験では、手術後に症状が改善した方々の改善時期の割合は、手術後一ヶ月以内に改善する方が57%、手術後半年までに改善する方が74%、手術後一年以内に改善する方が95%でした。そのため、手術後もしばらく外来で経過観察させていただくことが多いです。

患者様へ

顔のけいれんが気になって人に合うのを避けてしまうようになったり、仕事に支障がでたりすることもあるでしょう。鏡を見るのも辛くなってしまったという方もいらっしゃいます。しかし、痛みを伴う病気ではなく、また命に関わる疾患ではないので、我慢してしまう方も多いです。自分でも気づかない間にストレスを溜め込んでいるかもしれません。あなたと同じ病気と悩みに苦しんでいる人を沢山しっています。お気軽にご相談ください。

三叉神経痛・顔面痙攣外来の予約について

当専門外来の予約がなかなか取りれないとのお言葉をいただいております。
早く外来受診をしたい方は、以下のメールアドレスにお問い合わせください。担当者より折り返しご連絡いたします。
mvd-twmu-amc.ao@twmu.ac.jp
(三叉神経痛・顔面痙攣外来についての問い合わせ専用のアドレスになります。ご容赦ください)